これまでネットビジネスでは、あまり重視されてこなかったのが高齢者層です。
ネットにアクセスする人口が少ないことが大きな原因でしたが、近年は様相が急速に変化しつつあります。総務省発表データによると、65歳以上の高齢者で、インターネットを利用している人は、36.9%にのぼります。特に、65歳~69歳までの層に限れば、前年比20%以上の伸びを示しており、急増している現状がうかがえます。
原因としては、OSや機器が扱いやすくなったこと。パソコンのセッティングや利用についてティーチングしてくれるさまざまなサービスが拡充してきたこと。などさまざまな環境要因があげられます。実際、株式会社NTTデータ経営研究所のパソコン調査でも、高齢者の操作能力は、一般に認識されているより高く、若年層とほぼ同等レベルにある、という結果が報告されています。
また、図書館や市役所など、インターネットサービスが充実してきており、「高齢者にとって知りたい情報がネットで得られるようになってきた」という変化も、利用をうながす要因となっています。高齢者のパソコン利用はこれから確実に増加していくでしょう。
もともと高齢者は、時間と資金に余裕を持つ人が多く、物販においては非常に高いレスポンスが期待できる層です。また、体力的なハンデから、出歩くことや、重たい買い物を運ぶことに不便を感じることが多く、通販のヘビーユーザーが多い層でもあります。
インターネットビジネスにおいては、ぜひとも取り込みたい層だと言えます。
高齢者を取り込む手法
【紙媒体の利用】
高齢者には、紙媒体に対する愛着や信頼感を持つ層が多い、という特性があります。
新聞や雑誌に高齢者向けサプリメントやサポーターなどの広告が多いのはこのためです。
まずこういった紙媒体で販促を行い、サイトに誘導することで、継続的なサイトの利用を期待することができます。資金に余裕があれば、発行部数の多い新聞や雑誌展開が効果的ですが、その他にも下記のようなコストパフォーマンスの高い媒体があります。
①主に高齢者を対象とした雑誌
健康系では「いきいき」や「ゆほびか」。その他、趣味の雑誌もさまざまに発刊されています。歌舞伎専門誌「演劇界」や、「邦楽と舞踊」などは、発行部数こそ少ないものの、読者に富裕層が多いことが知られています。こういった特徴を理解した上で、販売したいアイテムによって、媒体を選択すれば、非常に有効な誘導が可能です。
②ニュースレター
各企業やショップが発行するニュースレターは、その顧客層が対象ですから、販売したいアイテムによって、非常に細分化したアプローチが可能です。たとえば地域の整体院などが発行するものであれば、「健康を気遣う当該地域の高齢者」が目にする機会が非常に高い、と言えます。
こういった媒体であれば、非常に安価に(ときには情報を提供することで、無料でも可能です)、ホームページへの誘導広告を掲載することができます。
③通販への同梱
通信販売を行う業者の中には、同梱サービスを展開しているものが少なくありません。
これには、「パンフレットに同梱する」、「商品に同梱する」、「請求書に同梱する」などの種別があり、特に商品や請求書に同梱されるチラシやカタログは、必ず開封されるため、高いレスポンスが期待できます。
また、信頼性の高い通販大手のアイテムに同梱されることで、「同等の信頼感を得られる」という利点も小さくありません。
【メールでの誘導】
高齢者のネット利用状況の中でも、電子メールの利用については、一般の利用者とほぼ同等の頻度となっています。先に紹介した株式会社NTTデータ経営研究所の調べでは、ともに98.7%となっており、差異はない、と結論づけられています。
時間に余裕のある高齢者は、メルマガやステップメールに目を通してくれる率が高い顧客層です。少し長めのテキストでも読んでいただけるので、信頼感を確立するため、しっかりとしたテキストをライティングすることが大切です。
【高齢者向けサイトとのリンク】
近年、高齢者を対象としたサイトが急増中です。ただ、まだまだコンテンツやリンクも少ないため、こういったサイトに情報を提供したり、リンクを貼ることによって、低コストでの高齢者誘導が可能です。
高齢者向けのSNSなど、コミュニティを利用することで、SNS全体の活発化に寄与し、WINWINの関係を築くことができれば、非常に有効な販促活動となります。
サイトデザインの注意点
どんな顧客層が対象であっても、基本となるのはユーザビリティーです。顧客層の特徴に沿った工夫や配慮を盛り込むことで、より高いユーザビリティーを提供することが可能となります。
高齢者を対象とするサイトでは当然、高齢者の特性を理解した上で、ユーザビリティーを考慮する必要があります。
○視認性『白内障対策のあるなしで、こんなに違う視認性』
高齢者に対する配慮で、もっとも大切なのが視認性です。
視力は年齢とともに衰えますが、特に白内障が進むと、色に対する視認性が大きく変化します。
緑色と青、黄色と白などが非常に判別しにくくなるのです。日常の中でよく使われる色なので、サイトデザインでも頻繁に利用されていますが、「緑と青」、「黄色と白」という組み合わせは、なるべく避けるべきです。
簡単な判別方法として、黄色のセロファン紙を用いる方法があります。これを目に当てて、画面を見直してみてください。見づらくなっている部分は、白内障が進んだ高齢者にとっては視認しにくいと認識できます。高齢者向けをうたったサイトにも、こういった色の組み合わせを用いているものが意外に多く見られました。
○フォント『大きさと太さで視認性を確保』
先の(株)NTTデータ経営研究所調べでは、ネットを利用する高齢者の48.6%がパソコンの『文字を大きくする機能』を利用しているそうです。視認性を考える上で、使用するフォントの選択が大切であることがよくわかります。太めのゴシック体など、ハッキリ見えやすいものが最適です。筆文字に近いフォントも好感度が高いのですが、使用する場合には、大きめのポイントを設定して、視認性を確保しましょう。
○色の好み『年齢層によって、好まれる色は意外に違う』
年齢層によって、好む色は変わってきます。財団法人日本色彩研究所の調べによると、団塊世代の男性は、他の層に比べ、ライトグリーンを好む率が高くなっています。また同報告では、団塊世代の女性は赤紫を嫌う、といった特徴もあげられています。有料になりますが、こういったデータの詳細を提供してくれる業者もありますから、ご利用されてもよいでしょう。
また、色については、ある種の配慮も必要となってきます。高齢ドライバー向けの紅葉マークデザインは、黄色とオレンジの色彩が「枯れ葉の色」をイメージさせることから、高齢者に大変不評でした。色のイメージを押しつけられることについては、センシティブな反応も見られるため、好まれるサイトを構築する上で、注意が必要です。
○英語表記は避ける『親しみを感じるのは、横文字より漢字』
戦中に教育を受けた高齢者では、ローマ字が読めない方も少なくありません。また日ごろ英語に親しむ機会も少ないため、横文字はそれだけでしばしば敬遠されます。同じことを表現するのに、多少難しい漢字や言い回しが必要であっても、横文字を避けた方が好まれます。
「コストパフォーマンス」より、「費用対効果」の方が、圧倒的に理解されやすい、と考えるべきです。
2010年にロイターで報道されたニュースに「年配者は若者の不幸なニュースを好む」という、ものがありました。ドイツとアメリカの大学が共同で行った実験の結果、年配者は若者が不幸な目に遭うニュースを好んで視聴しましたが、若者が視聴するニュースについては、特にそういった年齢的な偏りは見られなかったそうです。
研究者は「若者が中心的に扱われている社会の中で、『阻害されている』と感じることの多い高齢者は、若者が不幸な目に遭うニュースを見て溜飲を下げる傾向にあるのだろう」と分析しています。
これまでインターネット社会では、一般社会に増して、若者を中心に企画される傾向が強かったかもしれません。ウェブサイトの構築において、高齢者に配慮することは、物販に資するだけでなく、より多くの人を幸せにするインターネット社会を築くことにもつながります。
ぜひ、これからは高齢者も喜んでくれるようなウェブサイト作りにも配慮していきましょう。
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