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 未曾有の大災害となった東日本大震災では、多くの方が被害に遭われた。またその後に発生した福島第一原発の事故により、現在も多量の放射性物質が拡散しており、多くの方が避難生活を強いられています。
こういった一次的な被害とは別に、物販においては「風評被害でモノが売れない」という事態が深刻化。基準値を上回ったため、出荷規制を受けている葉もの野菜や牛乳などが販売できないのは妥当としても、「比較的原発に近い」というだけで、放射線値に問題がない茨城県産などの野菜も、市場では値が付かない状態だといいます。

風評被害の対象は農産物にとどまらず、東北や北関東に工場を持つメーカーの精密機器など、一部工業製品にまで及んでいます。当然、ネット上でも、さまざまな商品について販売の落ち込みが見られており、対策は急務と言えるでしょう。


風評被害の総量は「あいまいさ」×「重要さ」

 風評被害は主に「噂」によって引き起こされます。この噂について、アメリカの心理学者オルポートとポストマンが発表している下記の公式は有名です。

噂の総量=あいまいさ×重要性
 
噂の総量は、「あいまいさ」と「重要性」のかけ算で表されており、あることについて情報があいまいであるほど、またそのことが重要であるほど、社会に流れる噂の量が増える、ということになります。
噂の総量が多いほど、人はその噂に触れる機会が増え、意識に深く刻み込まれるので、必然的に風評被害も大きくなります。したがって風評被害の規模もこの2つの要素、「あいまいさ」と「重要性」に比例すると考えられます。
 今回の福島第一原発事故について分析すると、この2つの要素がどちらも最大級であることがわかります。
 
①不正確かつ理解が難しい情報が生むあいまいさ
マスコミ報道は「安全」を強調するものに終始しています。報道番組などを見ると、大学教授や原子力保安員、官房長官が口を揃えて「すぐに健康被害があるレベルではない」といった情報を発信しています。実際には、放射性汚染物質は原子炉から流失し続けており、各地でジワジワと農産物などの汚染が見つかる中、強調される「安全」を信じられる方は少ないでしょう。公式に発表される「安全情報」は具体性に乏しく信頼できないもの、と見なす方が増えているのは当然と言えます。
 そうなった場合、頼れるのは個人の判断であり、インターネットなどで提供されるさまざまな情報です。ただ放射性汚染物質による影響については、判断基準となる数値の理解も難しいため、個人での判断は困難です。
また、インターネット上に存在する情報は玉石混淆。危険性についてもさまざまな影響がレポートされているため、どれを選択すべきか、これまた判断がつきません。その結果、原発事故情報について一般消費者は、「安全」から「危険」まで、非常に振幅の大きな「あいまいさ」を実感することとなっています。

②「重要性」を増大させているのは健康への懸念だけじゃない
もう一つの要素、「重要性」については、健康や命に関わることですから、やはり最大級のもの、と言えます。特に子どもや女性については影響が大きい、と言われており、消費の中心であるF1世代が神経質になる要因になっています。
さらに放射能汚染の場合、1999年に発生した東海村臨界事故では近隣住民が「ホテルでの宿泊を断られた」、あるいは「婚約をキャンセルされた」といった情報が知られています。
こういった事例は単なる噂ではなく、実際に起こっており、放射線被曝することで、社会的な差別や、将来的な人生設計にまで大きな不利益をこうむることがある、という不安は、多くの方が共通して抱くものとなっています。


一般消費者の行動原理

 風評がもたらす不安から、一般消費者はまず、買い物をするにあたって、自身や家族の安全確保を最重視するようになります。
 今までは、効能や価格を選択基準としていたのに、今回のケースで言えば、「東北や北関東で生産されていないこと」が、最大の選択基準となるのです。
また地理的に不案内であることから、「忌避される地域」は実際に基準値以上の放射線が観測されている地域だけでなく、その周辺地域にも及びます。福島県ならどの市町村が原発に近いか、原発の風上に位置しているか、一般消費者はよく知らないためです。
こういった現象は「恐怖の同心円」と呼ばれていますが、知らないことについて消費者が「安全寄り」に判断するのはしかたないこと、と語る原子力専門家もいます。


風評被害対策の決め手は、情報管理

 風評被害は誤った情報による被害ですから、これに対抗するには、「正しい情報を発信すること」、「情報を管理すること」が最も重要です。

◇日常からの監視
風評には、広がり始めるとあっという間に広まってしまう特徴があります。先にも書きましたが、直接的な悪評でなくても、汚染されている地域やモノとわずかでも共通項があれば、「恐怖の同心円」の中に組み込まれてしまうことがあります。
販売している商品と類似性のある商品に悪評が立った。あるいは同じ生産地のものについて、危険性を指摘する声が上がり始めた。こんなときには要注意です。
日常から掲示板や関連ニュースを監視しておくことで、早期にその兆候をつかみ、対策を講じることが大切です。

◇正確なカウンター情報を発信する
風評に対する最大の対策が、安全性を訴えるカウンター情報の発信です。
発信に際しては、気をつけることが3つあります。

①数値や公平性の高い文献を多数利用。具体性のある公正な情報を発信する。
現在、関係機関が行っているような、「ただちに健康被害が出るとは言えない」といった、漠然とした情報は、信頼性に欠けるため、逆に不安をあおってしまうことがあります。
カウンター情報には、数値など客観的なデータを盛り込むことで、風評より信頼できることを訴求します。
また消費者が抱くだろうと予想される不安や疑問をくみ取り、先に回答を提示することで、不安感を一掃することができます。セールスレターのやり方、といえば、わかりやすいでしょう。
飛来する放射性微粒子による汚染が不安視されている場合であれば、「産地はどこ?」、「実際の商品の汚染度合いは?」、「商品管理はどうしてるの(野ざらし?)?」といった疑問を消費者は抱きます。
これに対しては、正確な産地名。第三者機関に依頼して測定した放射線量。商品管理の状況を画像付きで説明する。といった情報を発信方法で、消費者の不安感を大きく軽減することができます。

②スポークスマンを起用する
信頼性の高いスポークスマンを起用します。欧米各国ではすでに行われている手法で、スポークスマンの人格的な信頼性を利用して、情報の信頼性を保証するのです。難しいことを平易に、公正に説明できる人が好ましいでしょう。

③清浄イメージの形成
風評はイメージによってふくらむ部分が少なくありません。たとえば、マスコミが放射能汚染について情報を流す際、おどろおどろしい音楽をかぶせることがあります。実際に語られている情報以上に、音楽や画像のもたらす雰囲気が脳裏に刻み込まれ、危機感が高まります。
 カウンター情報を発信する際には、この効果を逆手にとるとよいでしょう。HPであれば、色づかい、フォント、音楽などについて、すべて信頼感と安心感を与えられるものにアレンジすることで、清浄さや安心感を訴求します。

◇掲示板対策
風評をさらに加速させるものとして、掲示板の存在があげられます。多くの方が好き勝手に情報を書き込む中に、誤情報が混じることは少なくありません。面白がってあおる書き手が現れると、一気にヒートアップし、風評が爆発的に広まってしまうこともあります。
管理者に削除依頼を出し、書き込みを削除してもらうことで、風評を断ち切ることができます。
削除依頼を出す方法はさまざまですが、「2ちゃんねる」などでは、削除依頼にガイドラインがあり、これに沿って依頼を出す必要があります。


冷静かつ説得力のある対応が鍵

 こうして見ていくと、風評被害の原因は主に、政府やマスコミ、ネット上の書き込みにあるようですが、実は一部業者も、意図せずしてこの風評の拡大に加担しています。
たとえば仕入れに際して、「人々が不安を感じて買わないだろうから」と風評被害を想定して商品を選別し始めた時、取り引き拒否や価格下落といった経済的な被害が始まります。消費者は業者のこの行動から、逆に「○○はやっぱり危ないらしい」と判断し、情報が一人歩きを始めることがあります。

 かつてイギリス出身の社会思想家、トマス・ペインは「中傷は奇妙な掟をもつ悪徳である。それを殺そうとすれば生きるが、放っておけば自然死する」と語っています。

 ただこれは情報の流通経路が限られていた時代の話でしょう。インターネット全盛の現代は、誰もが情報の大量発信を行うことができます。それだけに、デマや風評のもたらす被害は、放っておけばあっという間に甚大なものになりかねません。
風評が起因する事象についてしっかり学び、正確な情報を素早く発信する。風評被害に打ち勝つには、こういった努力が必要となります。

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